結構な腕前で!
第十章
「最近さぁ、校内でわけのわからないものに襲われる事件が多発してるみたいね」

 お昼休み。
 お弁当を食べながら、佐弥子が萌実に言った。
 何だか最近部活中に煙が出没しないと思っていたら、どうやら校舎のほうに出ているらしい。

「やっぱり化け物高校って噂は本当だったのね」

 学校の建っている土地柄、異世界のものに対する認識は、普通と比べて随分ある。
 少々妙なものが漏れたところでパニックにならないのはありがたいことだが。

「何故かそれを一手に引き受けてるのが茶道部って、ねぇ」

 ふぅ、とため息をついて、萌実はパックジュースを啜り上げた。
 どう考えてもおかしい構図だ。
 運動部ならまだしも。

---けどまぁ、せとか先輩とかの力が関係してるんだろうな---

 北条家と橘家は、この辺りではそれなりの家らしい。
 昔からずっとこういう異界の力の強い土地に根付いたので、力も備わったのかもしれない。

「そういえばさ、昨日二年の女子が襲われたとき、あんたの好きな先輩が助けたっていうわよ」

「え、せとか先輩?」

「眼鏡かけてたし、髪長かったからそうでしょ。ちょっとした噂よ。今までどこにいたかもわかんないほど存在感のない先輩がさ、颯爽と現れて助けてくれるなんて」

 ひく、と萌実の顔が引き攣った。

「普段はぼーっとしてるけど、いざとなったら頼りになるって、助けられた女子中心に先輩の株、急上昇。いいの? 萌実」

「いいわけないだろーー!」

 一声叫び、萌実はパックジュースを握り潰した。
 これは由々しき事態だ。
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