ある夜の出来事
ついさっきまで、あんなに怒ってたのに。
後悔もしたし、不安もあったのに…。
今はもう、そんなの全く消えてしまっていて。
ほんと私って単純な性格…。
でも、あの吉田有弥が私の目の前にいるなんて、まだ信じられないなぁ。
「どうかしました?」
私がまた黙っていたからか、彼が声をかけてきた。
「あ、なんでもないです。でも…」
「でも?」
私は、気になっていたことを聞いてみることにした。
「あの、この辺にはよく来るんですか?けっこう遠いですよね…?」
彼の所属するチームは他県にあるから、不思議に思っていたのだ。
「あぁ。今日はたまたまで…滅多に来ないんですけど」
「でも、あの時間までここにいたら、帰れないですよね?」
「今日はホテルに泊まる予定で」
「え、もしかして大事な用事があったとか?
大丈夫ですか?今ここにいて」
もしかして、デートだったりしたのかも…。
「全然、大丈夫ですよ」
そう彼が言ったとき、彼の黒い携帯が、鳴った。