初恋のキミは最愛ヒーロー
「碧瀬っ、お前…どこに行って……」
「見つけた!キーケース無事に発見したよ、壱夜くん!」
興奮気味な声で、右手を俺の目の前に差し出す碧瀬。
そこには、俺のキーケースが握られていた。
「えっ、これ……どこにあった?」
「実はね、小さな女の子が持ってたの」
「は?女の子…?」
予期せぬ返答に疑問符を浮かべて固まっていると、碧瀬が事情を説明し始めた。
話によると、この辺りをあちこち探していた時に、追いかけっこをして遊んでいる兄妹に遭遇。
その女の子が、たまたま碧瀬の近くで転んでしまい、心配して声を掛けたら、その子の手に俺のキーケースが握りしめられていたというのだ。
「ほら、壱夜くん…パレードの最中に靴紐が解けちゃったからって、しゃがんで結び直してたの覚えてる?」
「ああ」
「あの時に、ポケットから落ちたキーケースを女の子が拾ったらしいんだけど、ストラップがキラキラして綺麗だったから、そのまま持ってっちゃったみたいなんだ」
そういうことだったのか。
落としたの、全然気付かなかったな…。