初恋のキミは最愛ヒーロー

『あら、雨…降ってきたわね』


その日の夕方。


学校から帰って来て、リビングで本を読んでいると、お母さんが窓際にやってきて空を見上げた。


本当だ、雨…。


朝は天気が良かったけど、お昼過ぎから少しずつ雲行きが怪しくなってたんだっけ。


『そう言えば、お父さん…傘持って行かなかったような気が…。メールしてみようかしら』


お母さんがお父さんにメールを送ると、程なくして返信が来た。


『やっぱり持って行くの忘れたみたい。結構降ってるわよね…』


駅から家まで徒歩10分弱。


走って帰って来たとしても、かなり濡れちゃう。


『お、お母さん!前みたいに駅までお迎えに行こうよ!』


以前にも、お父さんが傘を忘れたことがあって、お母さんと一緒に駅まで傘を持って行ったことがあった。


あの時、嬉しそうに“ありがとう”と言って頭を撫でてくれたお父さんのことを思い出しながら提案すると、お母さんは優しく微笑んだ。


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