初恋のキミは最愛ヒーロー
「……ん…」
消毒薬の匂いが鼻をつく。
ゆっくり目を開けると、真っ白な天井とカーテン、そして私の顔を横から心配そうに覗く壱夜くんの姿が映った。
「莉彩、大丈夫か?」
「ここって、保健室…?」
「そうだよ。お前、化学室に移動する途中に倒れたんだよ」
そうだ。
私、紫葵ちゃんと教室を出た後に目眩が襲ってきて…
足がもつれて転倒したところで意識がなくなっちゃったんだ。
「俺、莉彩たちよりも少し先を歩いてたんだけど、突然…橘の悲鳴が聞こえてきたから引き返したんだ。そうしたら、お前が青い顔して倒れてたから、本当にビックリした」
「もしかして、壱夜くんが私をここに運んでくれたの?」
「ああ」
頷く壱夜くんにドクンドクンと鼓動が速くなるのを感じていると、四方を囲むカーテンの隙間から保健室の先生が入ってきた。
「碧瀬さん、気がついたみたいね。具合はどう?」
「さっきよりは少し良くなったような気はします…」
「このところ暑い日が続いているし、文化祭の準備でバタバタしてるから、きっと疲れがたまってるのね。少し熱もあるみたいだから、今日はもう帰ってゆっくり休んで?」
「はい」
私はゆっくりと体を起こした。