【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「あんたに……」
梨田が此の期に及んで言い淀む。また、目を逸らした。
「私に何?」
芽衣は、イライラしてきていた。さっきまで俺の天下みたいに自信満々で、イケメンな俺の顔を見てくれっみたいな態度だったのに。
芽衣は一歩前に出て梨田へ近づいた。
全くこんな綺麗な顔して、なにを言い淀むわけ? 躊躇しないで何でも好き勝手に言える自信満々な顔をしてるでしょうに。
「あんたに……」
あら、この雰囲気は何? 梨田の緊張感が芽衣にまで伝わっていた。
やたらと梨田の緊張感を感じる。
大事なプレゼンでもあるまいし、今はプライベートな時間でしょ? プライベートで何を緊張することがあるのよ。プロポーズをするでもないのだし……。
えっ、まさか。
芽衣は、梨田を見上げた。
梨田は、まっすぐに真剣な面持ちで芽衣を見ていた。その顔は何らかの覚悟でもしたような表情に見えている。
「あなた、プロポーズでも始めるつもり?」
「え、ま、まさかっし、しないだろ。なんでだよ。恋人でもない女にする訳ないし」
否定しながら、裏返りそうに声を高くして慌てている梨田。
「そうじゃないなら……ひとめ惚れしたとか、目に余るような急な告白も私は受け付けませんから。そういうのならやめてくださいね」
「そんなの、絶対にする訳ないけど、一応受け付けない理由ってのが聞きたい」
「言いましたよね? 私、あなたみたいな人が嫌いなんです。だから、告白もプロポーズも受けるつもりはありません」
梨田は脱力したように両肩の位置を大きく下げた。