【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!

「ちょっと、あなた! な、なんでそこに座ったの?非常識じゃない?」
驚いて目を見開く芽衣に構わず、男は椅子に更に深く腰をかけてしまう。

周りを気にして声をひそめながらも慌てる芽衣。

「ちょっちょっとっ、あなたっ仕事中でしょう? 店長だかオーナーだか知らないけど上司に怒られるわよ?」
テーブルに身を乗り出して男に注意をした。

「あれ? 俺のことを心配してくれるの?」
男もテーブルに身を乗り出してきた。


出た。

モテ男特有の自信ありげなセリフ。女は皆んな俺みたいなイケメンが好きだと勘違いしている男が言いそうなランキングだと8位くらいに入ってきそうなセリフだ。

呆れたように長く息を吐いてから芽衣は男を睨むようにして、じっと見た。

テーブルの真ん中に顔を寄せお互いを見合う2人。芽衣は睨むように見ていたが、男は薄ら笑いを浮かべていた。

「あなたの心配なんて私はしてないの。誰がするもんですかっ。そこは私の連れが座る予定の席なの。働いている店員が仕事中に座っていい席じゃないわ」
男の座った席を腕を伸ばして指差してみせる芽衣。


「あららら〜気の毒だけどさ、あんたの言っていることは間違いだらけだね〜」

「はぃ?一体どこが間違いなのよ」

椅子を指差していた芽衣の手を唐突にガシッと上から掴み、テーブルの上に着地させた男。

結果テーブルの上には重なり合う芽衣と男の手があり、それは恋人同士が手を握り合うように見えなくもなかった。

男の突飛な行動に、驚いた芽衣は口をあんぐりと開けてしまう。



「全部間違いだ。今夜はあんたの連れは来ない。だから、ここはもう誰の席でもないよな? もうひとつ、俺はもう勤務時間を終了してる」

顔を芽衣へ近づける男。
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