【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「咳がひどいのね」
顔をしかめる芽衣。
「ん、すぐに治る。芽衣がうちに来てくれたんだから、ごほっごほっ意地でも治さないとな」
「おかゆとか…作りましょうか?」
「いいよ。いい、そこまではさぁ。いくらなんでも悪いから…」
梨田は一度言葉を切った。だがすぐに
「でも、やっぱりお願いしてもいい?」とねだるみたいな口調で言ってきた。
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熱は無いからと梨田は、椅子に座り、キッチンに立つ芽衣をずっと嬉しそうに眺めている。
「あの、やりづらいんだけど」
洗った米を鍋に入れる手を休めて芽衣は、梨田を見た。
「気にしないで。透明人間だと思ってくれれば…ごほっごほっ」
思えるはずがない。
鍋に米を入れ強火にかける。
すぐに沸騰した鍋の中を一度かき混ぜ蓋を少し開ける。
かがんで火の状態を見て弱火にしていく。
顔を上げると、まだ梨田が芽衣を見ていた。
「なに?」
「いやぁ、なんで芽衣がうちまで、わざわざ来てくれたのかなぁって考えてたらさ…なんか俺に都合の良いような考えしかうかばないから困ってる」
梨田はカウンターに肘をついて、掌に顎を乗せ芽衣を微笑んで見つめる。
「か、風邪ひいたのは私のせいだから来ただけ」
「本当にそれだけ?」
梨田は少し笑みを含んだような表情をしていた。
何か言いたいみたいだ。
そして、その『何か』を梨田は芽衣に言わせたいようだった。