【【贅沢な片思い】】ヤツの所には行かせない!
「芽衣が自ら俺の家に入ってくるとは思わなかったよ。俺を信用してないんじゃなかったのか?」
ドキっとしてしまう芽衣。
「今だに信用してないけど」
信用していない。
だが、病気の人は、体力を失くしているはずだ。だから、きっと今日は襲われたりしないはず。
「へ〜それなら芽衣は狼のテリトリーに自らすすんで入ってきた赤ずきんかなぁ」
赤ずきん。
狼をおばあさんだと思い込んで近づく赤ずきんが私だというの?
「私は、あなたが病気だというから様子を見にきただけ。別に森に来たとは思ってないから。病気の人は、それなりに弱ってるだろうし」
「それはどうかなぁ?赤ずきんってさ、たしか狼に食べられたんだよな」
「は? 食べられてないわよ」
実は赤ずきんの童話をよく覚えていない。赤ずきんが食べられたか、食べられてないかは、よくわからない。
「食べられただろ?芽衣、狼のテリトリーに少しばかり入りすぎてんぞ。一度入ったら中々抜けられないのに」
含み笑いをする梨田。
「そっそんなことないわ。おかゆを作ったら、すぐに帰るつもりだもの」
「……何もなしで帰れると思ってんの?赤ずきんちゃん」
椅子から立ち上がり芽衣の方へ近づいてくる梨田。
「なに、やだ、どういうこと?」
芽衣は信じ難い気持ちで目の前にきた梨田を見上げた。