散歩道
『ねぇ、奈美。ちょっと来て』

『えっ…?あ?ちょっとっ』


私は、まだグランドの石をだるそうに拾っている奈美を引っ張って、団席へ向かう。


『なになに?麻里、痛いんだけど』

『いーからあ』


誠也さんは、まだ話している。
だんだん腹が立ってきた。


へらへらしてんなよ。


『…確信』

『は?』


ぽつりと呟いた私に、奈美はわけがわからないって感じに聞き返した。


『確信。確信できたよ』

私は立ち止まり、奈美の方を向き直して言った。


『あ?あぁ!それね、わかったわかった。で、麻里の確信は何?』

『むかつくの』

『は?』

『むかつくの!めちゃくちゃ』

『はぁ…主語を言え、主語を』

奈美は、飽き飽きして言った。


『見て、あれ』


私は、団席の方を指差して言った。
奈美は黙って指の先を見る。


『誠也さんと2年の女子。さっきからずっと話してるの』

『ふーん。で?』

『あれがすごくすごく嫌なの。むかつくのぉー!』

『それがあんたの確信?』



奈美は、含み笑いで聞いた。


私。間違ってる…?


だけど奈美は。
『いーんじゃない。それで』
笑顔でそう言った。
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