妹の恋人[完]
何から逃げる?けが?バスケット?

自分のことだけど、よくわからない。

確かに今、バスケができないことがとても辛い。

今まで毎日ずっと頑張ってきたバスケット。

ボールを握るることも、コートを満足に走ることもできなくなってしまった。

この先、いつそれがまたできるようになるかもわからない。

それがつらくてやめたいと思っていたのは事実。

でも、つらいからやめたいからだけじゃなくて、辛い辛いと進む先も見つけられず、ただ足踏みだけしている自分がもっといやだった。

進む道を見つけられずにイライラすることで、近くにいる人を巻き込んでいるんだと気がついたから。

カナコや高橋さんが、つらい思いをしているんじゃないかって思ったから。

何よりも、自分が先へ進みたいと思ったから。

「父さん、逃げるつもりはないけど、よくわかない」

「そうか。前を向いて進めそうだったら、それでいいんじゃないのか?」

焦ってもいい答えは出てこないから。

父さんは新聞を片付けると、湯呑のお茶を飲み干した。

前を向いているんだろうか。それすら良くわからないけど、今は自分を信じることにしよう。
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