妹の恋人[完]
「浅野君、午後もある?」

隣に座った女の子に聞かれ、そう言えば今日は午前で終わりだなと思いだして。

「いや、もう終わりだよ」

「やった!じゃあさ、ご飯食べに行こうよ。いい感じのお店見つけたんだよね」

男女ともに友達の多い彼女は、さばさばしているというかなんというか。

お互いに気を使わずにいられる存在で、俺にとっても大切な女友達でもある。

「卒業したらさ、なかなか会えなくなるよねー」

「伊藤さんは地方に行くんだっけ?」

「そうそう。卒業式が終わったらすぐに引っ越しだからもう部屋中段ボール!」

彼女に連れられ、大学から1駅離れたカフェに来た俺たちは、ランチのコースを頼んで。

リーズナブルなわりにボリュームもあり、なかなかおいしいお店だった。

「浅野君、好きな人ができたら、大切にしてあげてね」

突然の彼女の言葉に、持っていたフォークを落としそうになってしまった。

「え、急に何?」

「だって、ねぇ?本気で女性を好きになったこととかなさそうだし?」
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