妹の恋人[完]
えへへ、と笑いながらエプロンを外し、椅子にきれいにたたんで置いた。

「カナコが料理できるなんてなぁ」

「え!ひどいよおにいちゃん!私すっごいお手伝いしていたのにー!」

本当は、カナコが母さんの手伝いをしていたことは知っていたけど。

俺よりも7つも下なのに、まだ中学生なのに、家族の朝ごはんを作ってしまうカナコを尊敬してしまう。

あと少しで、二人の生活が始まることを思うと、お互いがお互いに頼ってばかりではダメなんだと思う。

当たり前のことだけど、家から出たことのない俺にとって、急に自分にすべての責任がかかってきたような気になってしまう。

いや、社会人になるわけだし、それくらいの責任感を持って生活していくべきなのかもしれないけど。

カナコをからかいながら、いつもと同じコースを走って。

帰宅すると、母さんが食事を温めなおしておいてくれたところだった。

急いでシャワーを浴び、朝ご飯は家族そろって食べる。

こんな当たり前のことも、もうしばらくしたらできなくなってしまうんだ。

なんだか感傷的になってしまい、さみしい気持ちがとても大きくて。

大学へ着き、いつものようにバスケットをしても、なんだか調子が出なくて。

いつもより早めに切り上げ、残り少ない講義に出た。
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