アレキサンドライトの姫君
「ディルク様っ!」

驚愕と不安と恐怖が見え隠れする形相。ドレスの両端を摘み上げながらディルクへと駆け込んできたエーデルのその只ならぬ様子に、ディルクは目を見張った。

「エーデル、どうした!?」

そんな彼女と王太子の様子に場内が騒めく。

「ディルク様…、今、これを…っ」

切れ切れに言いながら四つ折りの紙を差し出すと、ディルクの顔色も一気に変わる。
全てを悟ったかのようなディルクは咄嗟に声を張って命じた。

「騎士団長! 直ちに全ての扉を閉じ城門を封じろ。招待客の誰一人として王宮から一歩も出すな。急げ!」

高らかに言い放たれたその命令に、騎士団と衛兵が広間から走り去っていった。
物々しい雰囲気に奇妙な異変が否応なく漂い、招待客の表情も強張っていく。
ふと隣に佇むディルクの手元に視線を移すと、四つ折りにされたあの紙を開いてその一点を凝視していた。

「これは……っ」
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