Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
陣さんの車に乗せられて連れていかれたのは、おしゃれな外観をしたパティスリーだった。
とはいえ、こんな時間。すでに閉店しており、入口にはシャッターが下りている。
陣さんがポケットから鍵を取り出し、慣れた手つきでシャッターを上げた。どうやら彼の経営しているお店らしい。

もちろん店の中も閉店作業を終えていて、私たちの他には誰もいない。
併設されたカフェスペースに私と千里さんが向かい合わせに座り、陣さんは見守るように少し離れた席に腰を降ろした。

千里さんが改まって姿勢を正す。

「お話ししたいのは、他でもない、夕緋のことです」

ごくりと喉を鳴らし頷いた。なにしろ私たちの共通項は御堂さんしかない。
なにを言われるのかは……なんとなくわかる気がした。

「お願いです。夕緋と別れていただけないでしょうか」

千里さんは単刀直入に告げると、立ち上がり頭を下げた。

その言葉は正直、予想通りだったけれど、まさかここまで深く頭を下げてお願いされるとは思わなかった。
私が婚約者なのだからこれ以上彼に近づかないで! くらいに言われるのかと思っていたのに。

驚いた私は、なんとか頭を上げさせようと試みるが、彼女は頑として揺るがない。
もしかして、私がYESと言うまでずっと下げ続けるつもりだろうか。
助けを求めて陣さんに視線を向けると、彼は目を背けため息をついた。
< 109 / 249 >

この作品をシェア

pagetop