Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「犯人の顔は見たのか?」

事務所に着いた私たちは、二階のオフィスで事の経緯について話し合った。

「いいえ。暗かったですし、帽子にマスクもしていたので」

私と御堂さんは定位置に座り、陣さんは落ち着きなく部屋の中を歩き回っては、物珍しそうに辺りを物色していた。
飾られていた林檎のオブジェを気まぐれに手に取って弄びながら、陣さんは私へ視線を向ける。

「前に襲ってきたやつじゃないのか?」

「それが、コートを着ていたので体格もよくわからなくて、同一人物かどうかは……」

「別人と考えるのが妥当だろう」

首を捻る私と陣さんへ、御堂さんが答えた。椅子に深く腰掛け難しい顔をする。

「ホテルで俺たちを襲ってきた犯人は、ナイフを所持し、明らかな殺意を持っていた。身を隠そうともせず、ある意味、衝動的だったともいえる。しかし今回の犯人は、身を隠し、凶器も持っておらず、華穂ちゃんを捕まえたにも関わらず、何の危害も加えていない」

「すぐに俺が現れたから、危害を加える時間がなかったんじゃないのか?」

「最初の犯人であれば、捕まえた瞬間、ひと刺しにしているはずだ」

鋭い瞳で恐ろしいことを言われ、再び背中にぞくりと悪寒が走った。
確かに殺されても不思議ではないと思う瞬間があった。犯人が本気で私を殺めたいと思っていたなら、その瞬間を逃さなかっただろう。

「犯人が複数いることは間違いないだろう。彼らが同じ目的を持って行動しているのかも怪しい」

御堂さんが身体を私の方へ向ける。

「ひとまず、犯人が明らかに華穂ちゃんにターゲットを絞ってきた以上、しばらくひとりにならない方がいい」

もちろん、あんなことがあった後で、ひとりになんてなりたくない。
とはいえ、ひとり暮らしの私がひとりで出歩かないなんて限界がある。
御堂さんの忠告にひとまず頷くものの、どうしたらいいのかわからなくて……
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