Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「……あんたら、俺の存在忘れてんだろ」

忌々し気な突っ込みが斜め上から降ってきた。目を開いた先に陣さんの呆れ顔。

御堂さんは私から身体を離すと、ため息交じりに振り返った。
もしかして、邪魔されたことに腹を立てたのだろうか、わざとらしく言う。

「……陣、いたの?」

「ってめっ!! 言っとくけどな、助けたの俺だからな!?」

陣さんのクレームを完全に無視した御堂さんは、再び私へと憂いに満ちた視線を向けた。

「それより華穂ちゃん、どうしてこんなところに」

「スルーしてんじゃねぇ!」

「あ、えと、事務所飛び出しちゃって、ごめんなさい……」

なんと説明しようか迷っていると、陣さんがフォローを入れてくれた。

「怪我した旧友の見舞いに来てやったんだろうが! そしたら、たまたま、コイツが襲われてるところに出くわしたんだよ」

私たちが連絡を取り合っていたことがバレないようにだろうか、陣さんは『たまたま』と言って偶然を装った。
それに口裏を合わせることにする。

「駅の近くへ……コンビニに行こうと思って。そしたら、男に襲われて」

咄嗟に思いついた嘘を並べて微笑んでみたら、御堂さんは納得できない顔をしながらも、渋々といった様子で頷いた。

「こんな時間にひとりで外へ出るなんて」

「ごめんなさい」

「とにかく、事務所へ戻ろう。立てる?」

「はい」

立ち上がろうとして初めて、足ががくがくと震えていることに気が付いた。
襲われたときの恐怖の余韻がまだ身体に染みついている。
本当に、殺されるかと思った……。

そんな私の肩に御堂さんは手を回し、事務所に辿り着くまでの間、しっかりと抱きしめていてくれた。
もう大丈夫だ、離さない、そう言ってくれているような気がして、なんだかうれしかった。
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