Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
頑なに彼は『愛』という単語で処理することを拒んだ。ごまかしてばかりで、はっきりとした答えを聞かせてくれない。

それって、御堂さん自身も躊躇っているからなんじゃないの?

なのに、表情だけは勝手にひとりで納得したみたいに清々しくて、余計に腹が立った。

「華穂ちゃん、聞いて」

固く結ばれた私の手をほぐすように、御堂さんが手を重ねた。

「結局俺も、大きな力には逆らえない。仕事も、結婚も、俺の意思とは関係ないところで決まっていく。自分で選ぶことを許してはもらえないんだ」

社長になって、好きな仕事をして、地位も名誉もすべて持っているはずの彼が、なぜ笑顔でそんな悲しいことを言うのか。
それは彼の定められた運命に抗い続けた歴史を知らなければ理解できないものなのかもしれない。

「親の敷いたレールの上を歩くのが嫌で、デザイナーになった。自立できることを確かめたくて、自分の会社を作った。けれど、いずれは親の跡を継がなければならない。築き上げてきたものをすべて捨てて、結局はレールの上へ舞い戻るんだ」

自虐的に笑ったあと。
御堂さんは空気を抱きしめるように、ふんわりと優しく私の肩を包み込んだ。

前みたいに、情熱的に私を求めるようなことはしない。
すごく理性的な……まるで別れの挨拶みたいな抱擁だった。
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