Melty Smile~あなたなんか好きにならない~
「……やめろ。これ以上彼女に手を出してもなんの得にもならないだろう」
「こっちは後がないんだ。やり直すことなんて出来ねぇし、とっくに狂ってんだよ、俺は」
首筋にナイフの腹があたって、血の通わない冷えた感触が伝わってきた。
この角度を少し傾ければ、きっと鮮やかな深紅の噴水が喉もとから噴き出すだろう。
他人に命を握られる、恐怖。
――けれど、どうしてだろう。
陣さんがそのナイフを私へ突き立てることは、ないような気がした。
「ベッドの方へ移動しろ、壁に手をつけ」
銀色の獲物を振りかざし、陣さんが御堂さんへ命令する。
御堂さんはゆっくりと指示に従いながらも、私を取り返す好機をうかがうかのように息を潜めていた。
「……どうする気だ」
「……お前なんかに華穂は渡さない。お前に華穂は相応しくねぇよ」
陣さんが私の身体を引きずって、御堂さんと反対側の壁を擦るようにして出口へ向かう。
御堂さんから視線を離さぬままじりじりと後方へ下がり、やがて背中に出口のドアがぶつかった。
ガチャリと金具のあたる音がした。陣さんがドアノブに手をかけたのかもしれない。
このまま私を連れて、逃走しようとしているのだろうか……?
「こっちは後がないんだ。やり直すことなんて出来ねぇし、とっくに狂ってんだよ、俺は」
首筋にナイフの腹があたって、血の通わない冷えた感触が伝わってきた。
この角度を少し傾ければ、きっと鮮やかな深紅の噴水が喉もとから噴き出すだろう。
他人に命を握られる、恐怖。
――けれど、どうしてだろう。
陣さんがそのナイフを私へ突き立てることは、ないような気がした。
「ベッドの方へ移動しろ、壁に手をつけ」
銀色の獲物を振りかざし、陣さんが御堂さんへ命令する。
御堂さんはゆっくりと指示に従いながらも、私を取り返す好機をうかがうかのように息を潜めていた。
「……どうする気だ」
「……お前なんかに華穂は渡さない。お前に華穂は相応しくねぇよ」
陣さんが私の身体を引きずって、御堂さんと反対側の壁を擦るようにして出口へ向かう。
御堂さんから視線を離さぬままじりじりと後方へ下がり、やがて背中に出口のドアがぶつかった。
ガチャリと金具のあたる音がした。陣さんがドアノブに手をかけたのかもしれない。
このまま私を連れて、逃走しようとしているのだろうか……?