ナミダ列車







頬を緩めていたミユちゃんは、一転して顔を強張らせる。

「やだよ…」

そう漏らして。





「学ぶことは大人になるために必要なことだべ?」

「そんなことしなくてもなれるもん」

「それじゃあ本当の意味の"大人"にはなれねかんべ」




学ぶことを放棄する────。


大人という概念は酷く曖昧だけれど、このおばあさんが定義しているそれは、物事に対して深い分別があること、世を正しく見極められる力を十分に持っている人のことを言うんだと思う。

確かに、やりたいことを好きなだけやることも凄くいいことだと思うけれど、それだけではほんの一握りの事実にしか目を向けられない。

深い学びを持った人は達観している。視座が高い。そうなると、他の人よりも広く物事が見渡せ、その分多くの事実に気づくことができる。

引き出しの量が圧倒的に多くなったのなら、それは確実に何をやるにもいかされる。







「怖くて苦しいことに逃げずに向き合っから、それを乗り越えた分だけ大人になれるのと違うべ?」


"東武日光行き"の電車が揺れる。

いつのまにかハルナさんは黙ったまま、視線を私へと向けていた。




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