ナミダ列車
「それは…良かったよ」
「…本当に」と後から付け足した彼女は、目尻にクッシャクシャな皺を作って微笑んでいた。
喉の奥からやっと絞り出したかのような声だった。心のこもった言葉だということに気づかないわけではない。
そんなに喜ばれるようなことを言ったかな…?
────と、ハルナさんを見ても、彼はぼんやりと車窓を眺めているだけだった。
これだから掴めない。オンオフが激しい人だと思う。
「でも…、」
すると、今度はミユちゃんが言いづらそうにして唇を二、三度噛み締めた。
「ミユそんなに強くないもん」
「…ミユ、」
「ばぁちゃんみたいに、根性ないもん」
顔を上げてはっきり伝えるミユちゃんは、きっと、老婦人が言ったことなんて本当は分かってたのかもしれない。
「馬鹿にしてくるみんなのことだってものすっごく怖いし、勉強するよりもお絵かきしてた方がずっと上手くいくし楽しいじゃん」
────そう。
分かる……と、酷く共感したのは、なんでなんだろう。
「人間は、ものすごく…弱いよね」