ナミダ列車
ガタンゴトン……。
私が言いたかったこと。その代弁。依然として揺れる車内で木霊したのは、ハルナさんの声だった。
ミユちゃんの言葉に答えたのは、彼女の向かいに座っている老婦人でも、私でもない。
会話なんて聞いてないと決め込んでいた、目の前のアンニュイな眼鏡男だった。
「俺も、凄く弱いんだ」
「…オニー、チャンも?」
「そうだよ。何も守れなかった。それこそ、取り返しのつかないことも」
「……取り返しのつかない、こと?」
「うん。それでも縋り付きたくて、祈りを乞うてみたり、悪あがきもしてみたり。でも…先なんて見えなかった。馬鹿みたいに果てしなくて。無謀な旅をし続ける…」
ポツリ、ポツリと、口を開くハルナさんにミユちゃんも私も気持ちが向いてしまう。
老婦人もその雰囲気を察してか、物悲しげな瞳を彼に落としているだけで何も言わなかった。
「いつか終わるのかな。いつか報われるのかな。いつになったら心から笑えるようになるのかなって。いつも不安まみれだった」
「……ミユだったら、嫌になっちゃう」
「ハハ、うん。もちろん何度もそう思ったかも。結局何もできなかった。俺はなにも……あげられなかったんだ」
声のトーンを下げたハルナさんは寂寥な瞳を宿す。笑っているけれど、泣いているようだった。