ナミダ列車
「本当に…弱い」
こうして長いこと乗車していくうちに、ハルナさんという男がどんな人間なのかが浮き彫りになっていく。
はじめはヘラヘラしたふざけた人だと思ったかけれど、今は違う。泡沫のように消えてしまいそうな人だと思う。
────太陽の光に溶けてしまいそうに。
「じゃあ、オニーチャンは…」
「なんてね」
「へ?」
「ここから先は、そこのオネーチャンに聞いてみな?」
「…って、えっ?ちょ、」
……と、辛気臭いことを脳裏に過ぎらせていた私に火の粉が飛ぶ。
「お絵描き、このオネーチャンも好きなんだってさ」
「えっ?!そうなの?!」
途中で話すのが怠くなったのか知らないが、ハルナさんは唐突に私に話を振ってきた。
自由奔放。急に語り始めると思いきや、何の前触れもなく話し終わる。
────ちょっと、ハルナさん!
「ま、まぁ…そう、なんだけど…」
表では当たり障りのない返答をしているものの、内心彼に突っかかりたくて仕方ない。
……って、ああ、また外を眺め始めて自分の世界の中に入り込んでしまっているし。