ナミダ列車








「本当に…弱い」




こうして長いこと乗車していくうちに、ハルナさんという男がどんな人間なのかが浮き彫りになっていく。

はじめはヘラヘラしたふざけた人だと思ったかけれど、今は違う。泡沫のように消えてしまいそうな人だと思う。

────太陽の光に溶けてしまいそうに。







「じゃあ、オニーチャンは…」

「なんてね」

「へ?」

「ここから先は、そこのオネーチャンに聞いてみな?」






「…って、えっ?ちょ、」


……と、辛気臭いことを脳裏に過ぎらせていた私に火の粉が飛ぶ。





「お絵描き、このオネーチャンも好きなんだってさ」

「えっ?!そうなの?!」


途中で話すのが怠くなったのか知らないが、ハルナさんは唐突に私に話を振ってきた。

自由奔放。急に語り始めると思いきや、何の前触れもなく話し終わる。



────ちょっと、ハルナさん!







「ま、まぁ…そう、なんだけど…」


表では当たり障りのない返答をしているものの、内心彼に突っかかりたくて仕方ない。

……って、ああ、また外を眺め始めて自分の世界の中に入り込んでしまっているし。




< 75 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop