ナミダ列車
それよりもやはり、ハルナさんには影を感じた。
私とは関係のない他人のことのはずなのに、いまとなってはこうやって意識が向いてしまうのが不思議だった。
「上手なの?」
「え…上手…なのかは分からないけれど、一応ずっと続けてることだよ」
興奮ぎみに私を見上げてくるミユちゃんに、歯切れの悪い返答をする私。と、同時に感じるのはハルナさんからの視線だった。
かと思えばそれはすぐにまた外へと向けられてしまったけれど。
「じゃあミユのばぁちゃんと一緒だね!」
「…え?」
「ミユのばぁちゃんもね、ずっと絵を描いてるんだ。だからよく教えてもらってるんだけど、なかなか上手くいかないんだ」
「そうなんだ」
ニシシと八重歯を見せるミユちゃんに、老婦人は「…たいしたものじゃねぇべ」と、やや謙遜ぎみに笑っている。
きっと素敵な絵を描くのだろうな…。
こんなに朗らかに笑う人が描く絵だもん。色彩豊かで心温まるものを生み出すのだろう。