ナミダ列車









ミユちゃんも、老婦人も私を見ていた。

さっきのおじさんの時もそうだったけれど、自分自身も深く考えさせられた。

誰かにものを言う時というのは、これほどまでに自分を振り返るものなのか。






「言ってしまえば明日死ぬかもしれないし。だったら、今やりたいと思ったことをやり遂げた方がいいのも事実」

「…うん」

「だけど、そのやりたいことをちゃんと"実現する"ためにはね、考えることを放棄しちゃ駄目なんだよ。やりたいことをやるのには、いくつか方法があるでしょ?例えば、絵を描きたいってなったとき。最初になにする?次はどうする?って…」

「ある…」

「うん。あるね。ただ闇雲に"やりたい"だけじゃいけないと思うの。どれが"達成"への最善策かを、怖がらずに考えなきゃ」




案外ポンポンと言葉が出てきた。こんな説教じみた発言になどに耳も貸さない可能性もあったけれど、ミユちゃんはしっかり聞いてくれていた。

………まさか、私がこんなことを言うだなんてね。





「私ね、ずっと絵を描いてきて思うんだ。なにかを創造することってね、いままで培ってきた知識や経験がめっちゃくちゃ役に立つの」

「……そう、なの?」

「そうだよ。知識や経験をたくさん積んだ人の絵は、すごく濃密で見た人をみんな魅了する。それだけ説得力がある絵になるってこと。見知らない物事を、その場しのぎでそれっぽく描写しても、伝えられるものなんて薄っぺらい」



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