ナミダ列車
なんだったかな。
私も小さい頃にこのようなことを言われたんだっけ。
私がミユちゃんくらいの年の頃から、よく絵を教えてもらっている先生がいる。基本中の基本を叩き込まれたものだ。
………だから、これらは受け売りの言葉ばかり。まさか自分が誰かに助言できる日が来るとは思わなかったけれど。
「どうせだったら、本物の絵描きになりたいでしょ?」
「……本物の、」
「うん。ミユちゃんはなんで絵を描いてるの?」
私が絵を描き始めた最初のきっかけは、私がそうすることで両親が笑顔になってくれるからだった。
それが"見てくれる人"に変わっていくのにはそう時間がかからなかったけれど、決まって無限に力が湧く時は、"誰かのため"にと思っていた時だった。
────電車は依然として田舎町を駆け抜けてゆく。終点へと、少しずつ近づいていた。
「……それは」
ミユちゃんは、チラリと老婦人に目を配り、ギュッと口を結ぶ。
「ばぁちゃんが…最近、ね…元気なくて」
「…ミユ」
「でも、ミユが絵を描いたらね……ばぁちゃん、泣きそうになりながら笑ってくれたんだ」
「…っ」
「なんでなのか分かんないけど、絵を描いたらばぁちゃんが悲しい顔をしないでくれるから。だから…描いてる」