ナミダ列車








ミユちゃんは絵を描くことをしている方が楽しいからだとか、楽だからだか、口ではそう言っていたけれど、幼いながらにちゃんと考えていたんだ。

何かをやりきるには、自己満じゃ続かない。必ずどこかでガソリンが切れる。

そう教えてくれたのも、私が小さい頃からずっと絵を教わり続けている先生だったような気がする。






「じゃあおばあちゃんが感動する絵ってどんなのだろうね」

「え…?うん…と」

「人を感動させたり笑顔にさせたりするにはさ、伝える側もそれなりの知識や経験がないといけないなって、思わない?」

「……あ、」

「つまりはさ、もし、ミユちゃんが自分本位ではなく、誰かのための絵描きになりたいって思ってるなら、ただ技術面での練習をするだけじゃ不十分なんだ」






すっかり忘れていたけれど、私はずっとその気持ちを大事にして描いてきていた。

確かに絵を描くこと自体も好きだけれど、自分だけが満足していては、その絵の価値などたかが知れている。




────私は、自分が描いた絵を見て、誰かが涙してくれた時の感動を……知っているんだ。






「だから学びは必要なんだよ」

「…」

「もし、ミユちゃんが本当の絵描きになりたいのなら、もっともっとたくさんのことを知るべきだと思うよ」

「…うん」

「今は上手くいかないかもしれないけど、焦らないでゆっくりやり続ければいい。諦めないでやり抜くことが大事なんだから」

「…うん」

「もちろん、心が弱くなって、くじけてしまいそうになる時もあると思う。人間誰しも完璧にできてないから」

「……うん」






そこで乗り越えられるかどうか。

私は果たして、誰かにこれを言えるほど強くいられているのだろうか──。





「そんな時は…笑顔を見たい人、貢献したい人のことを考えるの。するとね?不思議なことに勇気が湧くの」

「…勇気」

「そうだよ。心が強くなる。どんな失敗をしたって、へっちゃらになる。そうすればミユちゃんもすぐに大人になれるよ。いい絵が描ける、魅力的な女の人に」





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