ナミダ列車
満面の笑みを浮かべているミユちゃんに頬が緩む。だけど流石に、出すぎたことを言ってしまったかもしれないと思った。
「ごめんなさい…。なんだか偉そうなことを言ってしまって…」
伺うように老婦人を見た。
彼女はしばらくギュッと口を結んでいたものの、私の視線に気づくやいなや「…ありがとね」と頭を下げてくれた。
「オネーチャン!オネーチャン!ねえねえ!これに絵描いてよ!」
────…と、皺の寄った優しげなその顔を無意識に見つめてしまっていると、隣からグイグイとスケッチブックが押し付けられる。
ミユちゃんだ。
「ええ?」
「お願い!オネーチャンの絵が見てみたい!」
「……私の?」
「うん!宝物にする!」
……宝物、か。
ハハ、と苦笑するも、押しに負けてスケッチブックと鉛筆を受け取ってしまった。