ナミダ列車
鉛筆を握ってみるとまるで不思議な感覚だった。久々に握った。すると私がどんどん鮮明になってゆくようで。
何を描こうかと思った時、ふと正面で頬杖をついているハルナさんが目に入った。
ぼんやりと田んぼ風景を眺めているだけの彼とは視線が合わない。
その目には何が映っているのだろう。
何を思っているのだろう。
……変な、人だ。
─────なーんとなくこの人をモデルにしようと思っただけのつもりが、どういうわけか自然と指が進んでゆく。
サラサラと鉛筆を滑らせながら私は、小、中学生の頃を思い出していた。