ナミダ列車
私がはやくうまくならなきゃ。
お母さんを元気にしてあげなきゃ。
——焦る気持ちに反して技術は全然ついてこない。
やりたいこと、夢があったとしても、努力した分だけ報われるとは限らない現実。
誰一人の力にもなれないのかもしれない、と唇を噛んでいた頃に、再びクラスの女の子たちが私の席のまわりに集まってきた。
「じょうずじゃな~い」
「いろはちゃん変なの~」
「こんなの描いてなにが楽しいのぉ?ただの紙じゃん。紙」
奇妙なものを見るような目だった。
そう言って口角をあげると私が描いていた絵を取り上げる彼女たちに「やめて」と身を乗り出すが、小馬鹿にしたまま返してはくれなかった。
確かに、上手ではない。
けれど、みんなと遊ばずに一人で絵を描いていることはそんなにも虐げられるに値するものなのだろうか。
ただ頑張ってただけ。
家で寝込んでいるお母さんに、出来上がった作品を見せてあげたかった。
きっと笑顔になってくれる。「ありがとう元気になったよ」って
でも、…こんなものじゃ足りない。こんな粗末な絵では本当の意味でお母さんを励ましきれない。
言ってしまえば見た人の人生を大きく変えるほどの感動。明日への活力となる。生きようと強く思えること。
そんな絵が…描きたいのに。
「あははっ!いろはちゃんおっかし~」
——だから、さ。
私、なにか彼女たちに迷惑をかけたかな?って…泣きそうになっていた時、教室にあの子が割り入ってきた。