ナミダ列車











「できた…」


普段から描き慣れているはずなのに、こうも基本中の基本を意識して描くと不思議だった。全く久しぶりな行為な気がしたんだ。

最近はおざなりにして絵に向かい合ってしまっていたのかな。

蓋の奥に、こんなにも大事な気持ちをしまいこんでしまっていた。私は、何をやる気なく過ごしてしまっていたんだろう。



この感覚、だ。



一筆一筆が生きているよう。

心が楽しいと…笑っていた。





やっぱり、大好きなんだな…。

ここ最近は怠けていた…、だなんて先生にバレたら、それこそ呆れられてもう絵を見てくれなくなってしまうかもしれない。





電車に乗ってみるものだ。

心の奥に置いてきていたものが見つかる。

列車旅の醍醐味。特別目玉のスポットではなく、ふとした時の車窓から見えるなんでもない風景が一番心に残るように、ひょんな出会いから大事な気持ちに気付かされる。

ただボックス席に座っただけ。

降車してしまったら、もう会う機会などないような人。



そんな些細な出来事もまた、非日常———。





「わああああ!じょうず!そっくり!」






ペンとスケッチブックをミユちゃんに返すと、彼女は瞳を丸くして喜んでくれた。









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