桜色の涙
「迅」
いつの間に来ていたのか、渚が近くで俺の名前を呼ぶ。いつもより声のトーンが高い気がする。
「……頑張れよ」
「うん、ありがとう」
不器用な渚なりの優しさが伝わってきて、また胸があたたかくなった。
俺達の性格は正反対と言ってもいいくらいだけど、なぜだか一緒にいると心地いい。
俺の居場所はここにあるんだ。そう思えて気持ちがスッと軽くなった気がした。
「っていうか、園田くん焼けた?」
「気にしてんだから言うな」
相変わらずなふたりの言い合い。でも見ていて微笑ましい。
渚は夏休み中に海へ行ったらしく、自分でも焼けたことを気にしている。
あまり黒くはなかった渚が日焼けしているなんて新鮮。