桜色の涙

「迅」


いつの間に来ていたのか、渚が近くで俺の名前を呼ぶ。いつもより声のトーンが高い気がする。



「……頑張れよ」


「うん、ありがとう」


不器用な渚なりの優しさが伝わってきて、また胸があたたかくなった。


俺達の性格は正反対と言ってもいいくらいだけど、なぜだか一緒にいると心地いい。


俺の居場所はここにあるんだ。そう思えて気持ちがスッと軽くなった気がした。



「っていうか、園田くん焼けた?」


「気にしてんだから言うな」


相変わらずなふたりの言い合い。でも見ていて微笑ましい。


渚は夏休み中に海へ行ったらしく、自分でも焼けたことを気にしている。


あまり黒くはなかった渚が日焼けしているなんて新鮮。
< 102 / 374 >

この作品をシェア

pagetop