桜色の涙


「今のって……」


江崎くんが去っていった後、ふたりきりになった俺達に訪れた沈黙。


別に気にすることなんてないのになんだか気まずい。それは彼が星那の元カレだからかな。



「あぁ、うん。ごめんね、気にしないで」


少しそっけなく言ってしまったかな。口に出してから後悔してしまったけど、他のことは考えられなかった。


どうして俺に話しかけてきたんだろう。


宿泊学習の夜のことがあったから?小谷さんと付き合ったから?考えを巡らせるけど答えは見つからない。


少しぎこちないまま彼女を家まで送り届けて家路を辿る。



「ただいま」


心は晴れないけど息を吸って家へ入る。


誰もいないだろう。そう思って玄関のドアを開けたけど、今日に限って部屋の電気がついていた。
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