桜色の涙

「ふたりはまた付き合ったの?ヨリを戻したの?」


「は?どういうことだよ」


彼は俺の発言に意味がわからないという顔をした。


え?どういうことって、聞きたいのは俺の方だよ。付き合っていないのにキスしたってこと?


それって……。



「だって、キス……」


「ははっ。あぁ、あれか。どうだろうな」


彼は思い出したように笑う。でも、俺にはその表情が寂しそうに見えるんだ。


俺にとって彼は1番の天敵。それでも、何か抱えているなら助けたいと思う気持ちは変わらない。



「あの、えざ……」


「じゃあな。もうお前に用はないから」


俺が聞く前に彼は言葉を挟んだ。まるで俺から逃げるように。
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