桜色の涙

「星那……っ!」


やっと追いついた星那の背中。振り返った星那の顔は涙で濡れていた。


どうして泣いているんだよ。俺の前で1度も見せなかった涙を、出会って間もない広瀬なんかに見せるんじゃねーよ。



「誤解だから話を聞いてくれよ……!」


「嘘だっ……!だって、さっきの子とキスしていたもん……っ」


やっぱり。さっきのキスを見られていたのか。あの女、何してくれたんだよ。お前のせいで─────。



「あれは本当に嘘でキスなんかしていないし、星那が誤解しているだけでアイツとは何もない」


いや、違う。俺のせいだ。キスされたのも俺の注意力が欠けていたから。あの女に誘われて断らなかったのも俺だ。


星那が泣いているのは俺のせいなんだ。
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