桜色の涙
「それなら、あの子は誰なの?」
「あ、あぁ、アイツは……」
そう言いかけると向こうから例の女が近寄ってくるのが見えた。
走りづらそうな浴衣を少したくし上げて俺に手を振っている。
「悠大くーん、どうしてあたしを置いていくのー?」
何も知らない女は平気な顔をして俺の前に現れた。イライラする。ことの発端は俺なのに、腹立たしい気持ちでいっぱいだ。
「あれ?この人達、知り合い?」
首を傾げて尋ねてくるけど、その仕草にも何も感じない。
「悠大くんの友達?」
「……ああ。ただの幼馴染みだから」
本当は違う。星那は俺の幼馴染みでもあり彼女だ。
でも、このときの俺にはそう告げる気力なんてなくて、咄嗟にそう言ってその場を切り抜けようとした。