桜色の涙
そして今に至る。彼女の目からは涙が溢れていてもう見ていられない。
好きな人が目の前で泣いているのに何もできない自分が無性に悔しい。
「星那……っ!」
後ろから江崎くんの声が聞こえてきて慌てて振り返る。彼女も驚いたようにハッと目を見開いた。
「誤解だから話を聞いてくれよ……!」
「嘘だっ……!だって、さっきの子とキスしていたもん……っ」
彼女の言葉に、江崎くんは弾かれたように「くっ……」と歯を食いしばる。
さっきのは本当なのかな。もしそうだとしたら、浮気ってことになるのかな。
「あれは本当に嘘でキスなんかしていないし、星那が誤解しているだけでアイツとは何もない」
早口に言い訳を並べているけど、彼女は信じられないという顔をしている。それはそうだよね。だってこの目で見たんだから。