・喫茶店『こもれび』
「ん?」
不意に目が合った三好さんが、可愛い笑顔を私に向けてきたりするから。
好きなことを密かに再確認していた私は、動揺を隠せないじゃないか。
えーい。
ここらでいっちょ、三好さんにアピールしておかねばっ。
「……見てただけー」
「なにを?」
「三好さんを」
「なんで?」
ほらね、やっぱり分かってないし。
全然気づいてくれてない。
首を傾げ、目の前にミルクティーを差し出してくれた三好さんに、笑顔でお礼を述べてみる。
「ありがとう」プラス、ニッコリと極上のスマイル作戦だ。
「……どうした?」
ちょっとはドキッとしてよー。
ガックリ肩を落とし、ミルクティーを飲もうと手を伸ばした私の背後に視線を移した三好さんは、入り口にお客様を見つけ「いらっしゃいませ」と声をかけた。
が、その後の言葉が問題だったのだ。
三好さんの声掛けにつられ、振り返ると。呟くように三好さんが口にした名前が、背中に突き刺さった。
「麻衣」
「……久しぶり」
誰?
三好さんと入り口に立っている女性客を交互に見ている私のことは、完全に視界に入っていないらしく。
私の視線など気にすることなく、黙って見つめ合っている二人。
その様子から、嫌な予感が過る。