・喫茶店『こもれび』

どうやったら、見つめ合っている二人が視線を外すのだろう。と瞬時に考えた結果、三好さんの目の前で片手を振ってみた。


「おーい、三好さん。お客様をお席に案内していいですかー?」


ハッと我に返ったように「あぁ」と言葉少なく答えた三好さんは、思惑通り女性客から視線を外し手元に視線を落とした。
そんな三好さんを見届け、席を立ち女性客の元へ駆け寄った。


「いらっしゃいませ、お席にご案内いたします」


先導している背中に全神経が集中しているみたい。
後ろをついて来る女性の靴音が耳に聞こえる度、ドキドキして動揺している。


このお客様は、いったい三好さんとはどういう関係なんだろう。
三好さんの反応からして、ただの常連客って感じじゃなかった。
でも、二人は確かに知り合いで。親しい間柄なのだろう。

うわぁ。どうしよう、すっごく気になる。
聞きたい。
聞きたいけど、怖くて聞けないと思っている自分がいる。


「こちらで宜しいでしょうか」

「はい」


勧めたのは、カウンターから一番遠い客席。
女性は私に勧められたまま、その席に腰を下ろした。


私、ちょっと意地悪だったかな。とも思うけど。
二人が私の存在さえも忘れる位、ただならぬ雰囲気を醸し出したりするからいけないのだ。
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