副社長のイジワルな溺愛
「もう話して構わないが」
「黙っていなくてはいけませんか? 電話中だって、話しかけたりしませんけど……」
「念のためだ。君がここにいるのを見たら彼女たちはまた噂を流すかもしれない」
忙しそうに部屋を出て行った副社長の後を追って、そっと内側から施錠した。
私が今ここにいるのを知っているのは、経理室長と副社長だけってことか。
噂なんて気にしなくていいって言ってたけど、少しは私を気にかけてくれているのかもしれない。
いつも冷たい表情だし、口を開けば声色も低くて冷静で、話せばいつ怒られるかと怖々接していたけれど……やっぱり本当は優しい人なんじゃないかと思う。
パーマをかけたのは分かりやすい変化でみんな気づいてくれたけど、少しだけ髪を切ったと気づいてくれたのは副社長だけだ。