副社長のイジワルな溺愛
「無理は言わないけど、金額が大きいから……お願い!」
見惚れていると、彼は断られると思ったのか片目をつぶってお願いしてきた。
ウインクのような表情にきゅんと鳴った私の胸の奥には、きっと彼は気づいていないんだろう。
「もちろん、いいですよ。倉沢さんのお願いは断れません」
誰にでも親切だし、地味な私と一度接しただけでこうして覚えていてくれる。
私が社内でまともに話せる、数少ない男性社員の一人だ。
「深里さんにしか頼めないからさ。本当助かる。ありがとね」
にっこり微笑んで去っていく彼を、同僚女子が見送る。
副社長同様、彼も人気が高いのは知っているけれど、数年ぶりの恋を自覚してからは可能性のなさそうな片想いでも続けていたくなるのだ。