副社長のイジワルな溺愛
食欲は失せ、義務的にお腹を満たそうと軽食で済ませた。
一時間ずっと考えてしまうのは、倉沢さんのこと。ちょっと気を使うかもしれないって言われたら、元通りどころか挨拶さえしなくなるのかなって……。
私だって、恋をする権利はある。社内で人気のある倉沢さんが相手でも、私の自由だ。
副社長のせいにするつもりはないけど、あの日……銀座に連れて行ってくれた日、手を繋がなければこんなことにならなかったのかもしれないって思ってしまう。
彼が手を繋いできたのも、大きな意味はないだろう。
戸惑っている私を連れて行くのに、強引にそうしただけ。
立場のある人が経理室の端にいる私を誘うなんて信じられないと思っていたから、察してくれたところもあると思う。
倉沢さんも、私のために酒席を用意してくれた。
前もって言われていたら間違いなく断っていたと思う。直前まで詳細を言わなかった彼を責めるつもりはない。