副社長のイジワルな溺愛

 副社長がコーヒーを片手に歩くだけで、周囲の視線も右往左往する。
 常に注目を集めている彼が、私の恋愛相談に乗ってくれているなんて、誰が想像するだろう。

 それほど優しい一面があるって、どれだけの人が知ってるだろう。



「あ、来た来た! やっぱり副社長も捨てがたいなぁ。あの瞳で見つめられたら秒殺覚悟だもん」
「うん……そうだね」

 彼がどんどん近づいてくる。
 話しかけられたらどうしようって、そればかりが気になって、彼女の話にも上の空で相槌を返してしまった。



「お疲れさまです!」

 真横に来たとき、香川さんが副社長に挨拶をしたせいで、一斉に私にも周囲の視線が集まって。


「……お疲れさま」

 少しも笑みを浮かべず、彼は香川さんだけを見つめて挨拶を返し、社食を去った。


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