副社長のイジワルな溺愛

「このところ、仕事に身が入っていない。一体何があったのか話しなさい」


 ――言いたくない。
 失恋したなんて口にしたら、現実味が濃くなって泣きたくなる。

 避けるつもりはないのに、倉沢さんとすれ違っても顔を見れなくなった。
 あと二ヶ月しかこうして一緒に働けないかもしれないのに。

 次に会うのは五年後なのに。



「聞いているのか?」
「はい」
「しっかりしろ」
「……申し訳ありません」

 涙声で返した私に呆れた様子で、副社長がおもむろにハイバックチェアを引いて、少し近づいてきた。


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