副社長のイジワルな溺愛
出迎えのない店の中は、肉の香ばしい匂いが充満している。
レンガ壁の店内は洒落ていて、全ての席が個室になっていた。
「行きつけですか?」
「いや、ネットで見て来てみたかった店」
今までは彼の行きつけにばかり連れて行ってもらっていたから、意外な一面に思わず笑ってしまいそうになる。
「なんだ?」
「……副社長も、普通なんだなって思って」
「当たり前だろ? 別に俺は偉くもないしな。店からすればただの客」
「行きつけに連れて行ってくださったのは、どうしてですか?」
「君が食べたいと言ったものが、たまたま顔の利く店と同じだっただけ」
席に着いても話していると、彼はビールを二つ頼んでくれた。
「最初はビールでよかったよな?」
「はい」
「覚えておく」
取り出した煙草をテーブルの隅に置くと、早速出されたビールで乾杯をした。