副社長のイジワルな溺愛
翌日、出社するなり好奇の視線を浴びた。
副社長が堂々と私を連れ出して、一緒にタクシーに乗って出かけたと騒ぎになっているようだ。
こうなることは予想できていたから、前と比べて戸惑いは少ない。
でも、慣れるものではなくて、私は俯き加減でエレベーターの到着を待ち、そそくさと経理室へ入った。
「おはようございます……」
「おはよう」
香川さんだけはいつもと変わらずにいてくれる。
彼女にとって噂はあまり気にならないのか、それとも倉沢さん派だからなのかは分からないけど、必要以上に騒ぎ立てずに接してくれるのが、私にとっては救いだ。
「深里さん、辞令出てるから見て」
「辞令!?」
PCを起動させて、社内のインフォメーションを確認する。
【出向:マレーシア支社 構造設計グループ 倉沢透流――】
倉沢さんの名前と関わるプロジェクトが載っていて、本当にその日が近づいてきたのだと実感させられた。