副社長のイジワルな溺愛

「あ、謝りついでなんですけど、試験ダメでした。やっぱりいきなり二級から受験するのは無謀でしたね」
「残念だったな。結構頑張っていたのに」
「ほとんどの週末は勉強ばかりしていたんですけど、私の頭が足りないのかもしれません」

 副社長のお金で買わせてもらった参考書をもっと読み込むべきだったんだろうなぁ。
 それに、倉沢さんに教えてもらった問題も、自力で解けるくらいにならないといけないんだと思う。


「まぁいい。次に受験するときは、俺が教えてやる」
「えっ!? 資格をお持ちなんですか?」
「建築士と測量士、監理技術者、宅建も持っているが、これくらいは当然だろうな」

 人に自慢できるような資格を何ひとつ持っていない私と比べて、副社長の有能ぶりに唖然とする。

 名家に生まれただけで胡坐をかかず、社長である兄と比べられてきた彼の負けず嫌いな性格が見えるようだ。


「言っておくが、俺はアイツみたいに甘くないからな。次も落ちたらどうなるか覚悟しなさい」
「……はい」

 彼の容赦ない言葉尻に肩を竦めつつも、自ら教えると言ってくれた彼の優しさに触れて、また楽しみが増えた。


< 279 / 386 >

この作品をシェア

pagetop