副社長のイジワルな溺愛

「月曜から、しばらく海外出張に出る。だから、その間は必然的に会えない」
「大変ですね、出張も海外だと移動が長いし……」
「もう慣れっこだよ。役職が付く前は倉沢みたいに海外勤務だってしたことあるしな」
「そうだったんですね!」

 まだ知らない彼の過去を、自ら教えてくれるのは嬉しい。
 疑ったりはしないけど、彼を知りたいを思う私の気持ちを満たしてくれるから。


「もう、アイツの名前出しても平気になったか?」
「はい」
「そうか」

 口癖のような彼の相槌に微笑み返すと、真剣な眼差しで私を見つめた彼はビールをひと口含んで喉に通した。



「でも、俺がいないことには慣れてほしくない。今回は一ヶ月から二ヶ月かかると思うから」
「そんなに!? いつ帰ってくるんですか?」
「現地で仕事がどれくらい早く進められるかによるだろうな」
「どこに行くんですか?」
「ヨーロッパ方面。この前行ってきたのは、今回の件に関係してる」

 そんなに長く会えなくなるなんて……考えただけで心が苦しくなる。
 目の前に副社長はいるのに、どこにも行ってほしくないって言葉にしてしまいそうだ。


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