副社長のイジワルな溺愛
「あのっ!」
手を離してほしくて訴えるも空しく、副社長は車寄せの方へ進んでいく。
最悪だ……。今頃、目撃した女子社員が話を持ち込んで騒ぎはじめているかもしれない。私みたいな地味で目立たない女の手を引いて、副社長が歩くだけで大ごとだ。
それに、副社長を苦手だと思っているはずなのに、繋がれた手が大きくて温かくて……ドキッとしてしまって気まずい。
「銀座まで」
「かしこまりました」
黒塗りのハイヤーに押し込まれるように乗り、副社長が告げた行先にぎょっとする。
銀座に連れて行かれるなんて、緊張して生きた心地がしないはずだ。それに、よりによって副社長と……。
「あの」
「さっきからなんだ。文句は聞かないぞ」
「どちらに向かわれるのでしょうか」
「銀座と言ったのが聞こえなかったか」
「聞こえましたが」
面倒そうに息をついた副社長には、それ以上問いかけられなかった。