副社長のイジワルな溺愛
エレベーターに乗っている間も、いつも眺める街の景色には目もくれず、私はひたすら彼を鑑賞するように見惚れる。
長身を飾る浴衣がこんなにも様になっている人を初めて見たからだ。
途中階から乗り合わせた他階の住人も、彼の姿を目にして動きを止めてしまったほど。
コンシェルジュに頼んだタクシーが到着したのを見て、エントランスのソファから腰を上げる。
いつになく彼の歩みがゆっくりしているのは、その方が浴衣姿の所作に合うからかなぁ。
「花火大会の会場近くまでお願いします。混み合っているようでしたら、手前で降りますので」
「かしこまりました」
空調の効いた車内で、彼はそっと私の手を取り繋いでくれた。